Kyrie

LD Version
男リツコ男	芦ノ湖より流れ込む水、水面下に沈む第３新東京市　森　『立入禁止ＫＥＥＰ　OUT』の標示　複数のネルフ関係者がハッチ部が破壊されたエントリープラグを取り囲んでいる　防御服に身を包んだリツコ、もう一人の者とエントリープラグ内を覗き込む「赤木博士… 」　…レベルCの汚染区域は南西方面に広がっています… 　…了解、D-16の発令を承認… 「この事は極秘とします。プラグは回収、関係部品は処分して」「 …了解。作業、急げ」　…第16使徒の構成物質はいまだ発見できず… 　…零号機～…
ゼーレA ゼーレB キール	第3使徒から第16使徒までの名と姿が次々表示される「ついに第16の使徒までを倒した」「これで、ゼーレの死海文書に記載されている使徒は、後一つ」「約束の時は近い」　円卓を囲むように直立する11のモノリス
キールゼーレC ゼーレA ゼーレB ゼーレD キール	「その道のりは長く、犠牲も大きかったな」「さよう。ロンギヌスの槍に続き、エヴァ零号機の損失」「碇の解任には十分すぎる理由だな」「冬月を無事に返した意味の分からない男でもあるまい」「新たな人柱が必要ですな、碇に対する」「そして事実を知るものが必要だ」
リツコ	リツコのオフィス　机の上に黒と白の猫の置物　頬杖を付きながらＥｎｔｅｒキーを中指で押す　ノートパソコンのディスプレイに表示される若い頃のゲンドウ、ナオコ、リツコの写真　髪を染める前のセーラー服姿の自分を見つめるリツコ、次に若いゲンドウをみつめる「 … 」　机に座るリツコの後姿両手いっぱいの夢↓
ミサトシンジミサトシンジミサト	シンジの部屋　天井からオレンジ色の灯り　学生服姿のシンジ　ベッドに腰掛け、虚脱した姿で天井を見つめている　ベッドに放置されたＳＤＡＴのイヤホンからは微かに音が聞こえる「シンジ君、開けるわよ」　戸を開け、シンジの隣に浅く腰掛けるミサト、両手は両膝を強く掴んでいる「ミサトさん…出ないんだ、涙。悲しいと思ってるのに、出ないんだよ。涙が」「シンジ君…今の私にできるのは、このくらいしかないわ…」　シンジの手に手を重ね合わせようとするミサト「やめてよ！」　ミサトに背中を向けてベッドに横たわるシンジ「やめてよ、ミサトさん！」　消え入るような声「ごめんなさい…」　部屋を出て行くミサトの影　戸の閉まる音 background music III↓
ミサト	( さみしいはずなのに、女が恐いのかしら…いえ、人との触れ合いが、恐いのね… ) 　リビング　ミサトに背中を向けて横になっているペンペン「ペンペン、おいで… 」「クゥ」　無視するペンペン ( そっか、誰でもいいんだ…さみしかったのは私の方ね… )
冬月	空のダミープラグ・プラントを見つめるゲンドウと冬月「レイか、彼女は俺の絶望の産物であり、いまだおまえの希望の依代でもある。　やはり忘れる方が無理という物か」
ミサト	朝　光が差し込むコンフォートマンション17のテラス　すずめの鳴き声　ミサトの部屋　机にうつ伏せになっているミサト、机上の電話が鳴っている「はい…もしもし………なんですって！？」「シンジ君！」
アナウンスシンジレイ	ネルフの病院　第一脳神経外科の廊下「第一内科のウガイ先生、ウガイ先生、至急、第二会議室へご連絡ください」　窓の外の風景を眺めるパジャマ姿の少女　頭に包帯が巻かれ、右手も包帯で吊るされている　差し込む光が少女の影を廊下に映している「綾波！」　振り向くレイ　右目はガーゼで覆われている「 … 」
シンジレイシンジレイシンジレイシンジレイシンジレイ	ネルフの病院　Ｄ-6/Ｄ-5ブロックを隔てる待合所　Ｄ-6ブロックのソファーに座る、制服姿のレイ　Ｄ-5ブロックの壁に寄りかかる、制服姿のシンジ「良かった、綾波が無事で… 」「 … 」「あの、父さんは来てないんだ… 」「 … 」「ありがとう、助けてくれて」「何が？」「何がって、零号機を捨ててまで助けてくれたんじゃないか、綾波が」「そう、あなたを助けたの… 」「うん…覚えてないの？」「いいえ、知らないの。多分私は三人目だと思うから」
レイ	402号室、綾波レイの部屋　無機質な部屋、　腕から包帯が滑り落ちていく　鏡を見つめるレイ　腕も顔も怪我はしていない　ふと左手を振り向く　カーテンから差し込む埃まみれの光　古びたチェストの上のひび割れた眼鏡　それを見つめるレイ　冷蔵庫の上の水で満たされたビーカー　眼鏡を握りつぶそうとする指先を見つめるレイ　軋むレンズ　力が込められる　眼鏡が撓む　ふと緩められた指先　雫が落ちる音　レンズに液体が広がっていく「 … 　これが涙？　初めて見たはずなのに、初めてじゃないような気がする。　私、泣いてるの？　…なぜ、泣いてるの？」
ゲンドウ冬月ゲンドウ	夜　ゲンドウの執務室　セフィロトの樹が青白く浮かびあがる暗闇「そうだ、ファーストチルドレンは現状維持だ。新たな拘束の必要はない。セカンド、サードに関しても同様だ。監視だけでいい」「しかし、レイが生きていると分かれば、キール議長らがうるさいぞ」「ゼーレの老人たちには別の物を差し出してある。心配ない」
キールリツコゼーレＡゼーレＣキールリツコ	闇のなか、裸で『SEELE　01 SOUND　ONLY 』と表示されたモノリスの前に立つリツコ「われわれも穏便に事は進めたい。君にこれ以上の陵辱、辛い思いはさせたくないのだ」「私は何の屈辱も感じていませんが」「気の強い女性だ。碇がそばに置きたがるのも分かる」「だが、君をわれわれに差し出したのは、他でもない、碇君だよ」「零号機パイロットの尋問を拒否、代理人として君を寄越したのだよ。赤木博士」 ( レイの代わり…私が… )
加持	ミサトの部屋　留守録の再生音　キーボードを叩く音　机の上には開封された薬用カプセル「君がほしがっていた真実の一部だ。　他に36の手段を講じて君に送っているが、おそらく届かないだろう。　確実なのはこのカプセルだけだ。　こいつは俺の全てだ。君の好きにしてくれ。　パスコードは俺たちの最初の思い出だ。　じゃ、元気でな」
ミサト	マイクロチップを摘み上げ、ライトにかざすミサト「鳴らない電話を気にしてイラつくのは、もうやめるわ。　あなたの心、受け取ったもの」　机の上のカプセルと拳銃を睨むミサト
ゼーレＡゼーレＤゼーレB ゼーレC	ネルフ本部内エスカレーターを下っていくリツコ「良いのか？　赤木博士の処置」「冬月とは違う。彼女は返した方が得策だ」「エヴァシリーズの功労者、いま少し役に立ってもらうか」「さよう、われわれ人類の未来のために」
ゼーレＥゼーレＦキール	円卓を囲むように直立するモノリス「エヴァシリーズ、すでに八体まで用意されつつある」「残るは後四体か」「第三新東京市の消滅は、計画を進める良き材料になる。　完成を急がせろ。　約束の時は、その日となる」
シンジリツコシンジ	夕方　茜色に染まるコンフォートマンション17のテラス　蜩の声　電話のベル「はい、もしもし？」　リビング　受話器を取り上げるシンジの後姿「そのまま聞いて。あなたのガードを解いたわ。今なら外に出られるわよ」「リツコさん… 」
リツコミサトリツコミサトリツコミサト	セントラルドグマ　地下　『CENTRAL DOGMA LEVEL18』の表示　『KEEP OUT　　立入禁止区域　　TERMINAL DOGMA:LEVEL1 SECTOR2』　セキュリティカードを差し込むリツコ　点滅する警告灯、LOCKEDは解除されない「 …？！」「無駄よ。私のパスがないとね」　リツコの背中に銃を突きつけるミサト「そう、加持君の仕業ね」「ここの秘密、この目で見せてもらうわよ」「いいわ。ただしこの子も一緒にね」　浮かび上がるシンジ、無言「 …いいわ」
シンジリツコシンジリツコミサトリツコ	ミツバチの巣のような六角形の灰色組織　それを背景に下降する赤ビームの概観をもつエレベーター　地下へ降りる三人、終始無言　『人工進化研究所　ARTIFICIAL EVOLUTION LABORATORY 　３号分室　ANNEX NO.3』　点灯されたライト　倉庫のような殺風景な室内　剥き出しのコンクリート壁　診療室を思わせる金属製のベッド、白い衝立　水のないビーカー、散乱するアンプル　黒いビニールがライトを覆っている「 …まるで綾波の部屋だ…」「綾波レイの部屋よ。彼女の生まれ育ったところ」「ここが？」「そう、生まれたところよ。レイの深層心理を構成する光と水は、ここのイメージが強く残っているのね」「赤木博士、私はこれを見に来たわけじゃないのよ」「分かっているわ、ミサト…」
シンジリツコシンジリツコミサト	広大な暗闇の空間に浮かび上がるオレンジ色の格子の隙間　隙間と隙間が形作る立方体にはシリンダーを抜き取ったようなレンジ色に輝く無数の溝　巨人の残骸が零号機の頭部と脊椎をつけた姿で無造作に捨てられている　高所からフェンス越しに眺める三人の姿「エヴァ？」「最初のね。失敗作よ。10年前に破棄されたわ」「 …エヴァの墓場」「ただのゴミ捨て場よ。あなたのお母さんが消えたところでもあるわ。　覚えてないかもしれないけど、あなたも見ていたはずなのよ。お母さんが消える瞬間を」　唖然として振り向くシンジ「リツコ！」　リツコの背中に銃を向けたまま叫ぶミサト　リツコは自虐的な笑いを浮かべている
ミサトリツコ	大脳のような巨大の管の塊、　それは脊椎に繋がっている　先にはオレンジ色に染まる人物大試験管　それが全体を支えている　その前に立つ三人「これが、ダミープラグの元だというの? 」「 …真実を見せてあげるわ」　リモコンスイッチをいれるリツコ吾への、涙↓
シンジ	一瞬の内にオレンジ色に染まる室内　全壁面の水槽　オレンジ色の液体の中に無数の綾波レイの形をしたものが漂っている「綾波…レイ…？！」　一斉に振り向く綾波レイたち
ミサトリツコミサトリツコシンジリツコ	オレンジ色の液体の中に浮遊する無数の綾波レイ　笑っているようにも見える「まさか、エヴァのダミープラグは！」「そう、ダミーシステムのコアとなるもの。その生産工場よ」「これが！？」　水槽のレイの姿とセカンドインパクトの資料がオーバーラップする「ここにあるのはダミー。そしてレイのためのただのパーツに過ぎないわ。　人は神様を拾ったので喜んで手に入れようとした。だから罰が当たった。それが15年前。せっかく拾った神様も消えてしまったわ。　でも今度は神様を自分たちで復活させようとしたの。それがアダム。そしてアダムから神様に似せて人間を作った。それがエヴァ」「ヒト…人間なんですか！？」「そう、人間なのよ。本来魂のないエヴァには、人の魂が宿らせてあるもの。　みんな、サルベージされたものなの。　魂の入った入れ物はレイ、一人だけなの。　あの子にしか魂は生まれなかったのよ。　ガフの部屋は空っぽになっていたのよ。　ここに並ぶレイと同じ物には魂がない。ただの入れ物なの。　だから壊すの。憎いから」　リモコンスイッチをいれるリツコ
レイ	オレンジ色が赤く染まっていく　綾波レイの形が崩れていくウフフフフ… フフフ…フフフ…
ミサトリツコミサト	思わず両手で銃を構えるミサト「あんた、何やってるか、分かってんの！」「ええ、分かっているわ。破壊よ。人じゃないもの。人の形をしたものだもの。　でもそんなものにすら私は負けた。勝てなかったのよ。　あの人の事を考えるだけで、どんな、どんな陵辱にだって耐えられたわ！　私の体なんてどうでもいいのよ！　でも、でもあの人は、あの人は…分かっていたのに… 　バカなのよ、私は！　親子揃って大バカ者だわ！」　うなだれるリツコの背中をみつめるシンジ　その背中に片手で銃を構えているミサト「…私を殺したいのならそうして…いえ、そうしてくれると嬉しい… 」　銃を下ろすミサト「それこそバカよ、あなたは… 」　泣き崩れるリツコ　肩を振るわせ号泣するリツコの姿をみつめるミサト「エヴァに取り憑かれた人の悲劇… 　私も同じか」
[ ＥＸＩＴ ]

Arranged by Kie　( E-mail : RXL05666@nifty.ne.jp )

LD Version
男リツコ男	芦ノ湖より流れ込む水、水面下に沈む第３新東京市　森　『立入禁止ＫＥＥＰ　OUT』の標示　複数のネルフ関係者がハッチ部が破壊されたエントリープラグを取り囲んでいる　防御服に身を包んだリツコ、もう一人の者とエントリープラグ内を覗き込む「赤木博士… 」　…レベルCの汚染区域は南西方面に広がっています… 　…了解、D-16の発令を承認… 「この事は極秘とします。プラグは回収、関係部品は処分して」「 …了解。作業、急げ」　…第16使徒の構成物質はいまだ発見できず… 　…零号機～…
ゼーレA ゼーレB キール	第3使徒から第16使徒までの名と姿が次々表示される「ついに第16の使徒までを倒した」「これで、ゼーレの死海文書に記載されている使徒は、後一つ」「約束の時は近い」　円卓を囲むように直立する11のモノリス
キールゼーレC ゼーレA ゼーレB ゼーレD キール	「その道のりは長く、犠牲も大きかったな」「さよう。ロンギヌスの槍に続き、エヴァ零号機の損失」「碇の解任には十分すぎる理由だな」「冬月を無事に返した意味の分からない男でもあるまい」「新たな人柱が必要ですな、碇に対する」「そして事実を知るものが必要だ」
リツコ	リツコのオフィス　机の上に黒と白の猫の置物　頬杖を付きながらＥｎｔｅｒキーを中指で押す　ノートパソコンのディスプレイに表示される若い頃のゲンドウ、ナオコ、リツコの写真　髪を染める前のセーラー服姿の自分を見つめるリツコ、次に若いゲンドウをみつめる「 … 」　机に座るリツコの後姿両手いっぱいの夢↓
ミサトシンジミサトシンジミサト	シンジの部屋　天井からオレンジ色の灯り　学生服姿のシンジ　ベッドに腰掛け、虚脱した姿で天井を見つめている　ベッドに放置されたＳＤＡＴのイヤホンからは微かに音が聞こえる「シンジ君、開けるわよ」　戸を開け、シンジの隣に浅く腰掛けるミサト、両手は両膝を強く掴んでいる「ミサトさん…出ないんだ、涙。悲しいと思ってるのに、出ないんだよ。涙が」「シンジ君…今の私にできるのは、このくらいしかないわ…」　シンジの手に手を重ね合わせようとするミサト「やめてよ！」　ミサトに背中を向けてベッドに横たわるシンジ「やめてよ、ミサトさん！」　消え入るような声「ごめんなさい…」　部屋を出て行くミサトの影　戸の閉まる音 background music III↓
ミサト	( さみしいはずなのに、女が恐いのかしら…いえ、人との触れ合いが、恐いのね… ) 　リビング　ミサトに背中を向けて横になっているペンペン「ペンペン、おいで… 」「クゥ」　無視するペンペン ( そっか、誰でもいいんだ…さみしかったのは私の方ね… )
冬月	空のダミープラグ・プラントを見つめるゲンドウと冬月「レイか、彼女は俺の絶望の産物であり、いまだおまえの希望の依代でもある。　やはり忘れる方が無理という物か」
ミサト	朝　光が差し込むコンフォートマンション17のテラス　すずめの鳴き声　ミサトの部屋　机にうつ伏せになっているミサト、机上の電話が鳴っている「はい…もしもし………なんですって！？」「シンジ君！」
アナウンスシンジレイ	ネルフの病院　第一脳神経外科の廊下「第一内科のウガイ先生、ウガイ先生、至急、第二会議室へご連絡ください」　窓の外の風景を眺めるパジャマ姿の少女　頭に包帯が巻かれ、右手も包帯で吊るされている　差し込む光が少女の影を廊下に映している「綾波！」　振り向くレイ　右目はガーゼで覆われている「 … 」
シンジレイシンジレイシンジレイシンジレイシンジレイ	ネルフの病院　Ｄ-6/Ｄ-5ブロックを隔てる待合所　Ｄ-6ブロックのソファーに座る、制服姿のレイ　Ｄ-5ブロックの壁に寄りかかる、制服姿のシンジ「良かった、綾波が無事で… 」「 … 」「あの、父さんは来てないんだ… 」「 … 」「ありがとう、助けてくれて」「何が？」「何がって、零号機を捨ててまで助けてくれたんじゃないか、綾波が」「そう、あなたを助けたの… 」「うん…覚えてないの？」「いいえ、知らないの。多分私は三人目だと思うから」
レイ	402号室、綾波レイの部屋　無機質な部屋、　腕から包帯が滑り落ちていく　鏡を見つめるレイ　腕も顔も怪我はしていない　ふと左手を振り向く　カーテンから差し込む埃まみれの光　古びたチェストの上のひび割れた眼鏡　それを見つめるレイ　冷蔵庫の上の水で満たされたビーカー　眼鏡を握りつぶそうとする指先を見つめるレイ　軋むレンズ　力が込められる　眼鏡が撓む　ふと緩められた指先　雫が落ちる音　レンズに液体が広がっていく「 … 　これが涙？　初めて見たはずなのに、初めてじゃないような気がする。　私、泣いてるの？　…なぜ、泣いてるの？」
ゲンドウ冬月ゲンドウ	夜　ゲンドウの執務室　セフィロトの樹が青白く浮かびあがる暗闇「そうだ、ファーストチルドレンは現状維持だ。新たな拘束の必要はない。セカンド、サードに関しても同様だ。監視だけでいい」「しかし、レイが生きていると分かれば、キール議長らがうるさいぞ」「ゼーレの老人たちには別の物を差し出してある。心配ない」
キールリツコゼーレＡゼーレＣキールリツコ	闇のなか、裸で『SEELE　01 SOUND　ONLY 』と表示されたモノリスの前に立つリツコ「われわれも穏便に事は進めたい。君にこれ以上の陵辱、辛い思いはさせたくないのだ」「私は何の屈辱も感じていませんが」「気の強い女性だ。碇がそばに置きたがるのも分かる」「だが、君をわれわれに差し出したのは、他でもない、碇君だよ」「零号機パイロットの尋問を拒否、代理人として君を寄越したのだよ。赤木博士」 ( レイの代わり…私が… )
加持	ミサトの部屋　留守録の再生音　キーボードを叩く音　机の上には開封された薬用カプセル「君がほしがっていた真実の一部だ。　他に36の手段を講じて君に送っているが、おそらく届かないだろう。　確実なのはこのカプセルだけだ。　こいつは俺の全てだ。君の好きにしてくれ。　パスコードは俺たちの最初の思い出だ。　じゃ、元気でな」
ミサト	マイクロチップを摘み上げ、ライトにかざすミサト「鳴らない電話を気にしてイラつくのは、もうやめるわ。　あなたの心、受け取ったもの」　机の上のカプセルと拳銃を睨むミサト
ゼーレＡゼーレＤゼーレB ゼーレC	ネルフ本部内エスカレーターを下っていくリツコ「良いのか？　赤木博士の処置」「冬月とは違う。彼女は返した方が得策だ」「エヴァシリーズの功労者、いま少し役に立ってもらうか」「さよう、われわれ人類の未来のために」
ゼーレＥゼーレＦキール	円卓を囲むように直立するモノリス「エヴァシリーズ、すでに八体まで用意されつつある」「残るは後四体か」「第三新東京市の消滅は、計画を進める良き材料になる。　完成を急がせろ。　約束の時は、その日となる」
シンジリツコシンジ	夕方　茜色に染まるコンフォートマンション17のテラス　蜩の声　電話のベル「はい、もしもし？」　リビング　受話器を取り上げるシンジの後姿「そのまま聞いて。あなたのガードを解いたわ。今なら外に出られるわよ」「リツコさん… 」
リツコミサトリツコミサトリツコミサト	セントラルドグマ　地下　『CENTRAL DOGMA LEVEL18』の表示　『KEEP OUT　　立入禁止区域　　TERMINAL DOGMA:LEVEL1 SECTOR2』　セキュリティカードを差し込むリツコ　点滅する警告灯、LOCKEDは解除されない「 …？！」「無駄よ。私のパスがないとね」　リツコの背中に銃を突きつけるミサト「そう、加持君の仕業ね」「ここの秘密、この目で見せてもらうわよ」「いいわ。ただしこの子も一緒にね」　浮かび上がるシンジ、無言「 …いいわ」
シンジリツコシンジリツコミサトリツコ	ミツバチの巣のような六角形の灰色組織　それを背景に下降する赤ビームの概観をもつエレベーター　地下へ降りる三人、終始無言　『人工進化研究所　ARTIFICIAL EVOLUTION LABORATORY 　３号分室　ANNEX NO.3』　点灯されたライト　倉庫のような殺風景な室内　剥き出しのコンクリート壁　診療室を思わせる金属製のベッド、白い衝立　水のないビーカー、散乱するアンプル　黒いビニールがライトを覆っている「 …まるで綾波の部屋だ…」「綾波レイの部屋よ。彼女の生まれ育ったところ」「ここが？」「そう、生まれたところよ。レイの深層心理を構成する光と水は、ここのイメージが強く残っているのね」「赤木博士、私はこれを見に来たわけじゃないのよ」「分かっているわ、ミサト…」
シンジリツコシンジリツコミサト	広大な暗闇の空間に浮かび上がるオレンジ色の格子の隙間　隙間と隙間が形作る立方体にはシリンダーを抜き取ったようなレンジ色に輝く無数の溝　巨人の残骸が零号機の頭部と脊椎をつけた姿で無造作に捨てられている　高所からフェンス越しに眺める三人の姿「エヴァ？」「最初のね。失敗作よ。10年前に破棄されたわ」「 …エヴァの墓場」「ただのゴミ捨て場よ。あなたのお母さんが消えたところでもあるわ。　覚えてないかもしれないけど、あなたも見ていたはずなのよ。お母さんが消える瞬間を」　唖然として振り向くシンジ「リツコ！」　リツコの背中に銃を向けたまま叫ぶミサト　リツコは自虐的な笑いを浮かべている
ミサトリツコ	大脳のような巨大の管の塊、　それは脊椎に繋がっている　先にはオレンジ色に染まる人物大試験管　それが全体を支えている　その前に立つ三人「これが、ダミープラグの元だというの? 」「 …真実を見せてあげるわ」　リモコンスイッチをいれるリツコ吾への、涙↓
シンジ	一瞬の内にオレンジ色に染まる室内　全壁面の水槽　オレンジ色の液体の中に無数の綾波レイの形をしたものが漂っている「綾波…レイ…？！」　一斉に振り向く綾波レイたち
ミサトリツコミサトリツコシンジリツコ	オレンジ色の液体の中に浮遊する無数の綾波レイ　笑っているようにも見える「まさか、エヴァのダミープラグは！」「そう、ダミーシステムのコアとなるもの。その生産工場よ」「これが！？」　水槽のレイの姿とセカンドインパクトの資料がオーバーラップする「ここにあるのはダミー。そしてレイのためのただのパーツに過ぎないわ。　人は神様を拾ったので喜んで手に入れようとした。だから罰が当たった。それが15年前。せっかく拾った神様も消えてしまったわ。　でも今度は神様を自分たちで復活させようとしたの。それがアダム。そしてアダムから神様に似せて人間を作った。それがエヴァ」「ヒト…人間なんですか！？」「そう、人間なのよ。本来魂のないエヴァには、人の魂が宿らせてあるもの。　みんな、サルベージされたものなの。　魂の入った入れ物はレイ、一人だけなの。　あの子にしか魂は生まれなかったのよ。　ガフの部屋は空っぽになっていたのよ。　ここに並ぶレイと同じ物には魂がない。ただの入れ物なの。　だから壊すの。憎いから」　リモコンスイッチをいれるリツコ
レイ	オレンジ色が赤く染まっていく　綾波レイの形が崩れていくウフフフフ… フフフ…フフフ…
ミサトリツコミサト	思わず両手で銃を構えるミサト「あんた、何やってるか、分かってんの！」「ええ、分かっているわ。破壊よ。人じゃないもの。人の形をしたものだもの。　でもそんなものにすら私は負けた。勝てなかったのよ。　あの人の事を考えるだけで、どんな、どんな陵辱にだって耐えられたわ！　私の体なんてどうでもいいのよ！　でも、でもあの人は、あの人は…分かっていたのに… 　バカなのよ、私は！　親子揃って大バカ者だわ！」　うなだれるリツコの背中をみつめるシンジ　その背中に片手で銃を構えているミサト「…私を殺したいのならそうして…いえ、そうしてくれると嬉しい… 」　銃を下ろすミサト「それこそバカよ、あなたは… 」　泣き崩れるリツコ　肩を振るわせ号泣するリツコの姿をみつめるミサト「エヴァに取り憑かれた人の悲劇… 　私も同じか」
[ ＥＸＩＴ ]